最近、また日本株の下落が目立ってきた。言うまでもなく株価とは投資家が先行きをどう見ているかということで動く。
だから経済を写す鏡という言われ方もする。経済の先行きを考える上で最も重要な経済指標でもある。
確かに、先行き不安の種は山ほどある。EUの不安定な財政・金融問題など日本経済を取り巻く環境は厳しくなっている。
それに日本自体が野田新政権になっても、相変わらず閉塞感が漂っている。よって日本ダメダメ感が充満し、株価が下落しているという事だ。
だが、こうしたメディアなどで良く見かける一般的な説明で、現在起きている株価下落の問題を片づけてしまうと、大事なポイントを見落とすことになる。それは、日本株のPBR(株価純資産倍率)が1倍割れという歴史的にも超割安な水準にまで下落しているという事をどう考えるべきかという問題だ。
PBR1倍割れというのは、投資家が、企業のゴーイング・コンサーン(going‐consern、事業の継続性)としての価値を全く評価していないという事と同義である。経済成長を前提とする資本主義の考え方からすれば、これは本来的にはあり得ない評価である。従って、現在の株式市場が発信しているシグナルは、単に先行きが不透明という事だけでなく、もっと深刻な状態に日本経済が直面しているという事を示しているのだ。
ならば一刻も早く日本はこうした状況から脱しなければならない筈だ。そのためには安易に日本ダメダメ論に流れ、縮こまっていては何も始まらない。できる事はいくらでもある。それにどんどん挑戦し、またそうした挑戦をみんなで応援し、盛り上げていくことこそが大切である。
その意味で野田政権の役割は重要だ。財政再建は待ったなしだ。消費税増税が避けられないのは有権者はみんな分かっている。増税法案の段階でもたもたしている場合ではない。違憲判決が出ている一票の格差是正もさっさと決着しなければならない。TPPもオバマ大統領に何を言ったかなどどうでも良いではないか。TPPだけでなくアセアン+3、アセアン+6も日本がリーダーシップを持って堂々と進めるべきだ。福島原発の冷温停止も大事だが、放射能の除染の問題をはっきりとした手順で着実に進める事の方がもっと重要だ。原発の問題もこれからどうしたら良いのか右顧左眄するのではなく、政府として正面からあるべき姿を示し、国民に問うのが先だ。国民に耳心地の良い事を言って逃げてばかりではこの国に明るい未来はない。
日本は国民挙げてどんどん挑戦し勝ちきる覚悟を持たなければならない。そういう気概が日本に満ちてくれば、間違いなく日本は今の異常事態から脱出できる。株価は日本にダメ出しを突き付けているのではない。もっとしっかりしろ、強い国になれというシグナルを出しているのだと思う。