大企業とサプライチェーン
今回の震災で改めて日本の中小企業が「ものづくり」日本を支えていた実態が明らかになったと思います。
大企業は一次、二次下請けぐらいまでは、それなりに管理していたようですが、それから先の三次、四次下請けといった典型的
な中小企業までは、これまでほとんど気にもしていなかったのでしょう。エリート大企業の社員から見れば、これらの中小企業に自分たちが支えられているなどとは思ってもみなかったのではないかと思います。逆に、自分たちが食わしてやっているぐらいに感じていたのではないでしょうか。完全に驕りだったのです。
円高が進行してコストを下げなければならないときは、大企業を頂点とするピラミッド構造の底辺に位置する中小下請けが、真っ先に値下げを求められてきたのです。それでも以前は、日本経済が成長していて生産量がどんどん増えていたから救われていました。でも、今は、円高でさらに価格は下がるし、その一方で量も増えない状況が20年近くも続いています。大した儲けにならないどころか、赤字続きで後継者もなく、廃業を考えている会社も多いと聞きます。
銀行も証券も大企業中心で、本当に日本を支えている中小企業には冷淡でした。行政も同様です。
今回の震災がこうした日本の歪んだ実態を変える契機になって欲しいと思います。
大企業は、その優越的な立場にたって無理を押しつけるのではなく、もっと大事にすべき相手だと気づいたはずです。
自分たちの競争力の源泉がどこにあったかも分かった筈です。
実は、日本の中小企業の重要性に気が付いたのは日本の大企業だけではありません。中国も韓国も、そして米国も同じです。
中国、韓国は政府系のファンドが日本の中小企業を買収するために早くも動き出しています。それを察知した米国もあわてて日本「復興ファンド」を先週立ち上げました。
日本から大事な技術が流出してしまうかも知れません。
こうした中、ようやく政策投資銀行が下請け企業を対象とした基金を発表しました。
人間は愚かでいつも何かを失って初めてその有難みを理解します。
中小下請け企業が大事だということを、震災とそして多くの犠牲者が、愚かな私達に、いわば教えてくれたのです。
有難いことにまだ間に合うのです。今こそ日本中で元気な中小企業が伸び伸びと事業ができるように、根っこから今までの仕組みを作り直さなければなりません。それが希望の光が溢れる日本の未来になると思います。